openlab.06 レポート/報告会「都市美観を考えるーアムステルダムとリールから」三木佑美

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京都という街に住んでいると、どうしようもなくこの街のふがいなさを感じる事がある。もちろん京都にはすばらしい文化や建物、美術品が残り、程よい大きさの都市空間は非常に住みやすい環境だと言える。反面、都市空間の内部ではそのような文化や歴史性への理解に変わり、市場優位的な価値観と単なるイメージとしての町家の濫用が横たわっている。京都は知らず知らずのうちにゆっくりと無秩序な都市へと移行しつつあるようだ。この都市に積み重なってきた豊かな記憶の層が、その美意識の欠如によって、じわじわと削り取られている。  
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今回報告をお願いした三木祐美さんはそんな京都の都市景観に在学中から違和感を抱き続け、果敢に取り組んでいくための実践を行ってきた。・・・

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彼女の行っている興味深い取り組みに、街の人々の意識を改善していくために、町家や文化的価値に優れた建物に対してリスペクトを表明する活動がある。町家保存の問題は、残念なことに、住人自体の自覚の欠如にその根幹がある場合も多い(もちろん相続税、消防法などからくる保存再生の困難さはあるとしても、何より住民自体に残す意志がなければなにも始まらない)。特に戦争を体験してきた世代は古いものより、過度に新しく近代的なものに価値を置きがちなことから、自分の住んでいる築数十年の町家にたいしてその良さどころか恥ずかしさを感じていることさえある。そのような彼彼女らに向かってその家の持つ素晴らしさをきちんと伝えていく活動は困難を極めるだろうが、その意義は深い。家に対して誇りを持ってもらう事は、保存だけでなく、都市の景観や、コミュニティー意識の改善へと繋がっていく可能性も有している。 
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そんな三木さんによるopnelab.06では、今年の7月まで彼女が研修で訪れていたフランス・リールでの研修内容、そしてオランダ・アムステルダムでの都市美観委員会を傍聴した際の報告会が開かれた。 まずリールは、ロンドン、パリ、アムステルダムをつなぐ中間点に位置し、ヨーロッパの地政学上の重要拠点となりつつある都市であり、それと同時に、古くからの建物も多く残る歴史都市でもある。90年代に大規模な再開発が計画され、コールハースやポルツァンパルク、ヌーベルらの設計による巨大な建築が建設されるのだが、開発方針として旧市街と新市街の「コントラスト」がコンセプトに挙げられていたため、旧市街の景観の保存と都市の発展が両立、その方針は現在まで引き継がれている。
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旧市街と新市街という街の作り方はヨーロッパにおいて一般的な方法でもあるため、ことさらに強調すべきことではないが、このように明確なコンセプト、方針が都市計画に生かされていることの重要性を感じさせられる。 とりわけ興味深いのは、旧市街では歴史的建造物保存の方針がきちんと定められており、それに則って建築物すべてに等級が振り分けられていることだ。等級は面的に決められるのではなく、一軒一軒個別的に定められ、改築や立て替えのルールが決められる。具体的には、そのエリアの建築物を扱うことができるのは国家認証を受けた歴史的建造物専門の建築家のみであり、等級によって要求される建築家の権利も異なってくる。結果的に、歴史的建造物を左右することができる建築家をきちんと選定する事で、建築家の社会的な価値、地位の向上にも繋がっているように思われる。個別建造物の等級付け自体十数年におよぶ年月を費やして行われており、日本のように形式だけの保存方針のようなものとは根本的に異なっているように感じられた。 
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ところかわって、彼女が偶然にもオランダで活躍している建築家の吉良森子さんに誘われてアムステルダムの都市美観委員会を傍聴した時の話も興味深い。都市美観委員会の構成は、建築家、行政、都市計画家、建築史家などからなり、毎回アムステルダム市内でのプロジェクトが美観という観点にふさわしいかどうかが話し合われる。決して保守的なもののみが求められるわけではなく、時に現代的なデザインを取り込むことで、周囲とのコントラストを引き出すような提案が通る事もあるそうだ。もちろん十分な景観上の配慮がなされた上で実現可能となることは言うまでもない。
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アムステルダムの都市景観において注目すべき点は、「タイポロジー」という概念が重要な考察対象になっているということにある。それがどのようなものであるのかに関しては参加者を交えての話し合いの焦点ともなったのだが、推測するに街区やストリートが長い年月のなかで獲得するにいたったイメージが要素として抽出され、デザインがそれに即して判断される準拠点となるべきもののように思われる。このようなタイポロジーによるデザイン評価は、建物の敷地のみに自律するものではなく、周囲の建物との関係の仕方、街路ヘの影響の仕方など関係性にも基づき設定されている。スライドでは三木さんによるスケッチと共に具体的な評価事例が紹介され、どのような議論が起こり、それらがどう結論づけられたかが説明された。
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都市のイメージとは短くない時間をかけてその都市が積み重ねることとなった記憶の束のようなものだ。それを下敷きにしている(だろう)評価基準としてのタイポロジーとは、その記憶の厚みに敬意を払うための重要な思想であるように思われる。翻って日本ではどうだろうか。現状の規制の思想に、その敬意はあるのだろうか。一方フランスやオランダにおける規制のあり方にはどのような問題点が存在しているのだろうか。今後、感情的な議論よりも冷静な比較研究がよりいっそう必要となるだろう。
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報告会後、三木さんを中心に京都の景観に対してどのような活動を進めていくべきかに関する提案もいくつか話し合われた。 都市景観、京都の町家問題などに明るい方、興味のある方からのご指摘、ご連絡をお待ちしています。 rad/k

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