Volume#3 Transnational Space
国境を越える空間
Regina Bittner, Wilfried Hackenbroich, Kai Vockler
※以下は「volume」誌の第3号に掲載された「Transnational Spaces」という記事の一部です。全訳です。
第6期「Bauhaus Kolleg」は、アーバン・メトロポリスにおける国境を越える空間の発展に着目している。このプログラムが焦点化しているのは、グローバリゼーションという現象がローカルな形の適応を引き起こしているという特定の空間的布置である。
これらの地域やそこでの進展は今日の都市や建築の計画にとって重要な場となっている。経済や金融、国際的な移動、グローバルメディア、そしてコミュニケーションネットワークの越境は、すべて文化的、経済的、そして社会的な活動がもはやローカリティに制限されていないような都市のコアにおける国境を越える空間の発生につながっている。ここでは、人々、商品、情報、そしてシンボルが移動していくことの強化や成長が最も分かりやすい。ローカリティが「フローの空間」へととけ込んでいくプロセスとしてのグローバリゼーションという考え方に対して、このプログラムは国境を越える諸々のネットワーク相互の関連、特定の空間に集まってくるローカルな実践、地域を越えた実践、そして国境を越えた実践の交わりを探究していく。こうした場の中で、日常的実践は固定化された国境線から切り離され、国境を越える社会的空間へと発展する。近隣やコミュニティという伝統的な考え方では、こうした現象はうまく説明できない。多様な地理学的地域のなかにある社会的生の現実は、こうしたネットワーク内で生まれ、新たな形のハイブリッドを生み出すのだ。国境を越える空間は、ローカリティとグローバリゼーションとの間の変化した空間的相互関係を研究するための情報に溢れた場なのだ。新たな、そしてはっきりとは明らかにしづらい関係性が生まれてくるごとに —空間と社会との間に、また物理的環境と社会的行為との間に— これは建築や都市計画のための新たな課題を提示する。これらは特定の場所やその直接的な文脈にはほとんど関係がなく、むしろその地域を越える連関のなかで場が持つ機能に関係しているのだ。
アイコン建築を通した場の再評価を目指す象徴的戦略は —ビルバオがその例を見せてくれはしたが— 大分摩り切れてきた。レジャーや消費者文化を経由した都市の人工的な演出も同様に使い古されてしまった。こうした種の象徴的な場を生み出す戦略は、今日の都市が置かれている複雑な空間的力学を考慮に入れれば適切ではない。こうした背景に対してある疑問が思い当たる。つまりローカルな空間のなかにある日常のインタラクションや社会的ふるまいがますます均質のものではなくなっているような世界において、「ローカリティ」とは何を意味するのか? 建築や都市計画は都市文化に加わる。つまりそれらは、それ自体が必然的に位置づけられる制限なき方針のなかで確立された公的な事柄なのだ。比較的静的な空間的発展モデルに慣れたプランナーは、新たなモデルや戦略を発展させるためにプランナーとしての自身の考え方を反映させなければならない。
建築や都市計画は、このようにして、その特異な分野的志向を超えて、社会的なプロセスへと積極的に関わっていくため、そして(またしても)政治的になるために、それ自体拡張せざるを得ないのだ。
国境を越える市場
イスタンブール/ラレリ地区
1990年代以来、イスタンブールの「Laleli」と呼ばれる地域は、かつての東側諸国とトルコ間における国境を越えた繊維貿易の中心となっている。1990年代のはじめ、境界が開くとともに、トルコでつくられた安価な繊維商品によってロシアの商人たち —大部分は女性— はわんさとイスタンブールへ引きつけられる。それぞれがスーツケースに入れて持ち運べるだけの量を買い、商人たちは転売のためにモスクワへと持ち帰る。こうした行為は1990年代初頭のロシアにあまり消費材がなかったということに起因するだけではなく、トルコ経済における大規模な景気向上に寄与している。当初「ナタシャ貿易 Natasha trade」という言葉でほのめかされたものは、要するに売春のことだが、その間にプロフェッショナライズされた。今ではホテルはロシアのビジネスウーマンたちのためにショップツアーを毎週日曜から木曜にかけて組んでおり、一般のショップに向かわないものを土曜日モスクワのマーケットで転売できるようになっている。「Laleli」における販売人のほとんどはロシア語に堪能で、商品の幅はロシアのビジネスウーマンの好みや選好に対応している。広告はバイリンガルで、支払いはドル。販売人自身は主にトルコの田舎から出てきている —ほとんどがクルドの背景をもっている— あるいはブルガリア、ボスニア、またマケドニアから来ている。彼らは大都市でなんとかやっていきたいと思っている移民なのだ。
下訳/さかきばら
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