Volume#04 DYNAMICITY: Tactics for a Changing Metropolis
ダイナミシティ
—変化するメトロポリスための戦術
エミリアーノ・ガンドルフィ(Emiliano Gandolfi)
多くの建築家たちにとって、都市の静的な理解に基づくこれまでの実践は現代の大都市を理解する手段としてあまり効率的でないことが明らかになりつつある。今日私たちが住む都市はもっとダイナミックなものだ。前世紀末に起こった技術的かつ社会地理学的な革命によって都市は急速に変わり、あまりに広大に、あまりに無定形になったがために、計画の無秩序化に対する大規模な戦略がもはや通用しなくなっている。ときに、ある展覧会が現代建築のなかで最も重要なひとつの傾向が持つアウトラインをトレースし、それら起こりつつある姿勢を規定する方法論に目を向ける機会を与えてくれる。
「ダイナミシティ」展。この展覧会では4組の建築組織による仕事が展示されている。彼らは戦術的に都市のダイナミックさへと介入し、その再読を可能とするために都市の風景をたどり、トレースし、そしてマッピングすることを自身の役割として見ている。「アクタール・アルキテクチュラ(Actar Arquitectura:スペイン)」、「アトリエ・ワン(Atelier Bow-Wow:日本)」、「コーラ(Chora:オランダ)」、「オッセルヴァトリオ・ノマド(Osservatorio Nomade):イタリア」の4組だ。彼らは、都市生活の質、快適さ、コミュニケーションシステム、そして感覚的側面などの優れた分析を行いながら、都市環境を再考し再提示する。私たちに都市のダイナミックな側面を見せ、理解させる仮設構築物、マップ、モンタージュ、そしてそこに身を置くことさえできる他の構築物をも造り出した。
従来からのいわゆる建築組織でも名のある教育機関でもないこれらゲリラ的小規模組織は、メガロポリスという不定形なものへと介入するためには、そのプロセスは異なった知見から行われることが本質的に必要だ、ということに気づいている。現代都市のまだ現れていないポテンシャルを開示し得るものやことへと目を向ける必要がある、と。プロトタイプ、マトリックス、そしてデータベースを通して、彼らは都市状況の切迫した現象に取り組む適切な方法論を規定するわけだ。その介入戦略はゆえに都市環境の分析を通して根拠付けられており、彼らはいわば最小規模での都市に向かい合っている。深く、かつ、ときには主観的な現実の見方が、さまざまな規模に配慮しながらマップやダイアグラムへと変換される。そうすることによって、常に目に見えるわけではないローカルなインパクトを持つグローバルな緒力を示すわけだ。彼らが着目するところは、都市組織の無視され忘れられた部分、環境を組織し調整する流れに視覚的な読みを与えようとするねらい、都市生活や法が最終的にどのように既存環境へ影響を与えているかを理解した上で新たな審美的価値を規定すること、である。よくあることだが、ひとつの分析は、新たな計画の提案と風景全体に関する新たな思考とを寄り合わせ、不可避的にまた別のものへつながっていく。こうした建築家の仕事は、新たな戦術的介入を規定すること、そして、都市風景の異なった見え方に気づくことだ。私たちがよく見る光景ではあるが、これらの提案は、形式的で審美的な側面以上に、建築やアーバニズムのプログラム的側面へと焦点を当てている。まだ手がつけられていない都市問題がどのようにどこに存在しているかを明らかにすること、そしてその重なりあいや再組織化を通して異なった解決をもたらしてくれるポテンシャルを精査し、時には新たな都市意識に向けた社会的行動を目標にする。よりいっそう、建築はある目的を果たすための手段となっているわけだ。
これら四つのカスタマイズされたデザインを通して、変化の手段を性格付けるプロセスを明らかにする個別のアプローチを比較することができる。「アトリエ・ワン」の貝島桃代と塚本由晴は、「ダメ」建築の事例を集めることで、東京の新たな都市パラダイムを規定している。文字通り「ノーグッド」な建築は、建築的な美学や形態を主張するわけではない、環境やプログラム上の必要性に対する実直なまでの素直さに優先順位を置くような建築の事例である。彼らのリサーチは美学的価値や都市の要求に関する異なった視点を提示する、いくつかのマニュアルの集積なのだ。こうしたリサーチから建築の役割や、いまだ調査されざるポテンシャルに関する新たな感覚が生まれてくる。
「ON/オッセルヴァトリオ・ノマド」は、ローマを拠点とする都市アートラボとでも言うべきハイブリッドな集団である。ONは建築行為を行う際、都市への関心、とりわけ、うち捨てられ散り散りになった空間、見捨てられたエリアを形作るあらゆるものへの関心に焦点を当てる。シチュアシオニスト・アンテルナシオナルよろしく、彼らは急速に進んだアーバニズムからほっぽらかしにされた居住地を基とする地図をつくる。2001年よりONは、70年代に建てられて以降今となっては使われなくなってしまった都市のメガストラクチャーの象徴、1キロにわたる9階建ての建物「コルヴィアル」の再創造に的を絞ったリサーチ・ネットワークを推進する。ローカルな居住者と関わりながら、プランニング、実験、そして教育的プログラムといったクロスフィールドによってその界隈の創造的な進化へ貢献した。
バルセロナでは、デザイナー、理論家、教育者や出版社の諸団体が、いくつかの異なったプロジェクトや施設をめぐり共同している。「アクタール・アルキテクチュラ」の関心は、物理的環境に関する情報、そしてそうした情報を通して私たちが住む空間を形作る社会政治的構造を集積し続けていくことにある。彼らは風景のポテンシャルを引き出し、こうした情報を書籍、展覧会、そして建築プロジェクトで提示する。究極的には彼らは、コンピューターやコミュニケーション・テクノロジーによって形づくられるあり得べき風景への見通しも提示する。それは既存の形にも、既存の権力組織によって示されるその構造にもオルタナティヴを与えるだろう。
「コーラ」は、オランダの建築家ラオル・バンショーテンによって、複合的な都市状況における諸々のダイナミックなプロセスを理解し、モデル化し、その形を変えることを目指し創設された都市/建築リサーチラボである。一方では都市の現場研究、他方で理論的で批評的な省察、この二側面によってコーラは、フィールドワークを通じて都市状況を記録し残していくことを目指した彼ら自身の方法論を発展させる。その関心は主にこうした状況のダイナミックなモデル化、シナリオ展開によるプログラムの秩序化と開示、そして政策立案やアクションプランニングのために都市のプロトタイプを形作ることへ注がれている。コーラのリサーチは、数多あるさまざまな集団や彼らの関心が向く、複合的な環境計画を扱う「アーバンギャラリー」を発展させるのだ。
下訳/さかきばら
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